昔の話 最終話2 (葬儀屋) 涙と反抗
12日目の昼
社長と自分は監察医施設から車で火葬場に向かいました
車を駐車場に停め
社長と自分は車から降りて社長が建物に入り
ストレッチャーの上に棺桶を積んで戻ってきました
棺桶に遺体を入れて焼却炉まで運びました
焼却炉の前に一人の黒い服を着た20代ぐらいの女性が立っていました
こちらに気づき頭を下げ
社長も頭下げながら
「この度はわざわざ起こし下さいましてありがとうございます」
女性
「いいえ、こちらこそ兄の事、ありがとうございました」
この女性は遺体の妹さんみたいでした
社長
「こちらがお兄さんです、最後にお顔だけでも」と
言いながら棺桶の窓を開けました
妹さんは顔覗き涙を堪えながら見てました
そして社長を見て
「すみません葬式が出来なくて、親戚がいなくって私と兄
二人だけなんです、兄は都会で一発当てて来るといい
田舎を出ました、なのに.......」
そのあと声が出て来ませんでした
社長は妹さんを見て
「それではお兄さんを天国にいかせます 、 よろしいですか?」
妹さんは声に出さず頷き
社長は職員の人を呼んで焼却炉の中に棺桶を入れ
職員の人が
「それでは、行います」と言いスイッチを押しました
凄い炎の音が聞こえて来て
社長、自分、妹さんは手を合わせました
社長が妹さんに
「あちらに休憩室がございます、こちらへどうぞ」と
言いましたが妹さんは
「いいえ、ここで終わるまで、いますんで気にしないでください」
社長は
「わかりました、自分達はあちらにいますんで、何かあったら
読んで下さい」と言いました
焼却炉の前に長い廊下があり、その先に休憩室がありました
自分と社長は妹さんに礼をして
廊下を歩いて行くと途中に喫煙所があり
社長が「吸ってくぞ」と言いタバコを吸い始めました
自分もタバコを出して
口に加えて
ふと、妹さんの方を見ました
妹さんは頭を下に向け、肩が震えていて「う、う、」と聞こえてきました
泣く声を我慢していたと思います
自分はタバコをしまいました
何かしてあげたい気持ちが込みあがり
妹さんに行こうとした瞬間、社長に腕を掴まれました
「お前が行って何になる、下手な同情は辞めろ」と
真剣な顔で行って来ました
自分は腕を払いました、最初で最後の反抗です
もうあの時は我慢の限界でした
社長に睨みつけ妹さんの方へ行きました
隣に立ち妹さんの顔を見ると、くしゃくしゃの顔に唇を中で噛んでいて
涙を流して手に持ったハンカチはビショビショでした
自分のハンカチを渡し
「声に出した方がいいですよ」と言った瞬間
妹さんはしゃがみ込んで大声で泣き出しました
自分はただ黙って隣にいるしか出来ませんでした
ブザーが鳴り職員が来て扉を開けました
中には少しの骨と灰しかありませんでした
社長が骨壷と長い箸を持って来て
「妹さんと一緒に入れて上げなさい」と言われ
妹さんと一緒に骨壷に骨を入れました
社長が怒ってるんじゃないかと顔を見ましたが
何故か怒っていませんでした
その後、妹さんを駅まで送り妹さんは帰って行きました
社長は時計を見て
「もうこんな時間だ、お昼まだだろう、お昼驕ってやるよ
近くに行きつけの所あるから」と言い
社長について行きました
社長が驕るなんて珍しいと思いながら歩いていると
ある店の前で止まりました
(ステーキハウス)と書いた店です
それを見た瞬間、胃が痛み始めました
午前中に起きた出来事が頭に蘇ったんです
社長と自分は店に入り、席に座ったると
社長がニコニコしながら
「ここの(肉)は美味いぞ、俺のオススメあるからそれにしろ」と言い
自分の意見も聞かずに注文しました
出て来たのは特大のレアのステーキです
社長は嬉しそうに肉汁と血が出るステーキを切り
口に入れました
自分はそれを見た瞬間、顔が青くなりどうしても
フォークとナイフを持てませんでした
社長が「どうした?食べないのか美味いぞ」と言い
自分の顔を見てました
凄い威圧感でした、
その時気づいたんです、自分は今、試されてると
綺麗事をやったお前にこれを食べる根性があるのかと
この時敗北感を感じました自分の負けでした
やっと辞める決意が出来ました
自分は社長に
「すみません社長、これ以上この仕事を続けられません
本当にすみません」と言いました
社長はこの事を分かっていたらしく
内ポケットから封筒出して
「2週間分の給料だ」と言い自分に差し出しました
自分はそれを受け取ろうと封筒を取った瞬間
社長は自分の腕を掴んで
「人間はな死んだら物になるんだあれは人間じゃない」言いました
自分は社長が掴んだ手を払いのけることは出来ませんでした
社長が自分の掴んで手を離し
自分は逃げるように店を出ました
それが社長との最後でした
それから3日ぐらい何もする気になれず
家に閉じこもっていました
でも4日目朝、このままでは、いけないと思い
外に出て公衆電話に行き葬儀屋に電話しました
奥さんが出て「はい、葬儀屋ですけど、」
自分は「葬式をお願いしたいんですけど」
奥さん「わかりました社長に変わりますね」
社長「はい、変わりました、ありがと........」
自分「バーーーカ」ガチャ
電話を切り
自分の中のモヤモヤを断ち切り
その足でハローワークに向かいました
お終い